神経膠腫(グリオーマ)

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神経膠腫(グリオーマ) は原発性脳腫瘍の約1/4を占め、WHO(世界保健機構)が定めるgrade 1(良性)からgrade 4(悪性)までの多種にわたる組織型を含む脳腫瘍の総称です。以下に、代表的な組織型を挙げております。

膠芽腫(glioblastoma, grade 4)
退形成星細胞腫(anaplastic astrocytoma, grade 3)
退形成乏突起膠腫(anaplastic oligodendroglioma, grade 3)
星細胞腫(astrocytoma, grade 2)
乏突起膠腫(oligodendroglioma, grade 2)

WHO grade 2の神経膠腫に対しては、手術による腫瘍の拡大摘出が優先され、術後放射線治療を追加する場合と手術のみで経過観察される場合があります。WHO grade 3以上の腫瘍に対しては手術による拡大摘出に引き続き放射線治療と化学療法を行います。

神経膠腫の患者さんの数は少なく、2005‐2008の脳腫瘍統計ではgrade 2で807人、grade 3で961人、grade 4で2049人です。このため、患者さんやご家族が身近なところから得られる情報は限られています。治療内容や経過、将来の不安なことなど、気になることは担当医にご相談ください。

 

神経膠腫(グリオーマ)に対する手術について

神経膠腫(グリオーマ)は正常脳組織への浸潤性が強いため、手術により腫瘍細胞を全て切除することは不可能です。しかしながら、過去の様々な研究から手術による腫瘍の切除量が多いほど患者さんの予後が良好であることが知られております。大阪国際がんセンター脳外科では腫瘍の切除により正常脳機能に影響がでないと考えられる範囲内で可能な限りの腫瘍切除ができるように心がけております。

5ALAによる蛍光ガイド下手術
5ALAを術前に投与すると代謝産物であるプロトポルフィリンⅨが腫瘍細胞内に蓄積され、励起光で赤色蛍光を発し、腫瘍部位を可視化できます(下図)。蛍光ガイド下と白色光下での比較試験では蛍光ガイド下の方が白色光下より造影領域の全摘出率が上がり、そのため有意に無増悪生存期間が延長していることが確認されています。5ALAという蛍光剤による術中蛍光誘導下手術を採用すると同時に、術前に施行しているメチオニンPET画像とMRI画像によるナビゲーション誘導下技術をもちいて腫瘍と血管、神経線維の位置関係を確認し腫瘍の最大摘出を目指します。

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覚醒下手術、術中電気生理モニタリング
運動野や言語野などの重要な脳機能野に接する腫瘍の場合、腫瘍の最大限の摘出と脳機能温存の両立を実現するため、覚醒下手術や術中運動神経モニタリングを用いています。覚醒下手術では麻酔科、リハビリテーション科と連携して術前に患者さんと一緒に手術室でシュミレーションを行い、患者さんが安心して手術に臨めるようつとめています。

ギリアデル(BCNU wafer)
ギリアデルはBCNUという抗がん剤を含んだ徐放性製剤で,生体内で加水分解されBCNUを徐々に放出します.摘出腔周囲の浸潤腫瘍に対して直接抗腫瘍効果を発揮します(下図)。適応症例に対しては留置術を施行しております。
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神経膠腫(グリオーマ)の遺伝子診断

最近の研究から 神経膠腫(グリオーマ)の治療効果予測ならびに予後予測に際して有効とされる遺伝子マーカーが同定されつつ有ります。2016年にWHOにより脳腫瘍分類が改定され、グリオーマの正確な診断に遺伝子変異が欠かせなくなってきました。大阪国際がんセンターでは手術により得られた組織標本から以下の遺伝子マーカーをルーチンに検査しております。これらの遺伝子診断でおよそ現在既知とされる治療効果予測ならびに予後予測因子の全てを網羅していると考えております。

  • p53遺伝子変異、IDH1/2遺伝子変異(遺伝子検査と免疫染色法の両方施行)、MGMTプロモーターのメチレーションの有無、1p/19q染色体欠失の有無(FISH法で検査)

神経膠腫(グリオーマ)に対する放射線治療<強度変調放射線治療(IMRT)>

神経膠腫(グリオーマ)はグレードにより放射線治療線量が変わります。例としてgrade 4の膠芽腫では通常60Gyの放射線量を30回に分割して照射します。大阪国際がんセンターでは通常の放射線治療だけではなく、必要に応じて強度変調放射線治療(IMRT)を行い、腫瘍中心部には高線量の照射を行いながら、正常脳への照射量を減じるように工夫しております。

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神経膠腫(グリオーマ)に対する化学療法

Grade 3以上の神経膠腫(グリオーマ)では化学療法の併用が推奨されております。経口抗癌剤であるテモゾロミドを使用することが基本となります。ベバシズマブ(アバスチン)はgrade 3以上の神経膠腫(グリオーマ)で使用される薬剤で、抗VEGF抗体でVEGFと選択的に結合することでVEGFのシグナル伝達を遮断し,血管新生を抑制します。日本からも症例の登録が行われた大規模試験であるAVAglioではテモゾロミドによる抗がん剤治療にアバスチンを上乗せした群の方がテモゾロミド単剤の群よりも無増悪生存期間が有意に延長していました。大阪国際がんセンター脳神経外科でもアバスチンによる悪性神経膠腫治療を行っております。

膠芽腫に対するその他の治療

オプチューン(交流電場腫瘍治療システム)は初発膠芽腫に対し、初期治療の放射線治療とそれと併用して行われるテモゾロミドの化学療法終了後の維持療法として使用される治療機器です。2017年12月から保険診療として認められました。頭皮に粘着性シート(アレイ)を張り、脳内に治療電場を作り出し、腫瘍の細胞分裂を阻害します。この治療には講習を受けた専門医の診察が必要で、治療を希望される方は外来担当医にお問い合わせください。
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臨床試験

大阪国際がんセンター脳神経外科はJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)が主導している「JCOG1016:初発退形成性神経膠腫に対する術後塩酸ニムスチン(ACNU)化学放射線療法先行再発時テモゾロミド化学療法をテモゾロミド化学放射線療法と比較するランダム化第III相試験」、「JCOG1308C:再発膠芽腫に対する用量強化テモゾロミド+ベバシズマブ逐次併用療法をベバシズマブ療法と比較する多施設共同ランダム化第III 相試験」の登録施設です。臨床試験にご興味のある方はご連絡ください。

治験

新規薬剤を用いた治験を行っております。詳しくは外来担当医にご相談下さい。

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