脳血管障害

脳血管障害 (cerebral vascular disorder ; CVD) は、脳梗塞、くも膜下出血などの脳の血管が破れたり、つまったりする病気の総称です。急激に発症した場合は脳卒中とも呼ばれます。発症の原因には動脈硬化による脳の血管の変化や、動脈瘤、脳動静脈奇形といった血管の異常などがあります。当院では、脳卒中予防の為の外科的治療を中心に診療を行っています。

脳動脈瘤 (cerebral aneurysm) とは

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脳動脈瘤とは、脳の血管に発生した膨らみのことです。原因ははっきり分かっていませんが、血管の分かれ道などで壁が薄くなり、数mmから数cmに至るまでさまざまな大きさに膨らんだ状態で発見されます。この動脈瘤が一度破れてしまうと、くも膜下出血と呼ばれる病気になります。

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くも膜下出血は非常に重篤な病気で、発症すると50%近い方は命を落とし、20%は後遺症を残し、社会復帰ができるのは30%とも言われています。破れた動脈瘤はそのまま放置すると非常に危険である為、止血の為の治療が必要になります。

最近では、脳ドックなどで破れる前の動脈瘤が発見されることが増えてきています。破れる前に発見されれば、破裂を予防する治療が可能なことがあります。しかし、動脈瘤は必ずしも破れるわけではなく、最近の研究では年間で0.95%の破裂率とされています(参考:UCAS Japan)。このようなデータにもとづくと、破裂を予防する為の治療を行えばよいということにはなりません。治療(手術)には危険性も伴いますので、それぞれの患者さんが持つ動脈瘤の部位、大きさ、形を総合的に判断して破れる可能性を判断し、患者さん本人とよく相談した上で治療方針を決定することになります。

脳動脈瘤の治療

動脈瘤の治療とは、何らかの方法で動脈瘤内への血液の流れを遮断し、破裂しないようにすることです。薬での治療はなく、開頭クリッピング術、脳動脈瘤コイル塞栓術といった手術が必要になります。

開頭クリッピング術

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開頭クリッピング術は、頭を開け(開頭)、脳の隙間から動脈瘤を直接観察します。そして、クリップと呼ばれる道具を使用して動脈瘤をつぶしてしまう手術(クリッピング)です。動脈瘤治療のスタンダードで、歴史のある確実な治療になります。欠点としては、頭を開ける必要があるため、多少なりとも頭皮に傷跡が残ります。また、全身麻酔が必須であり、患者さんの体力負担は次の脳動脈瘤コイル塞栓術よりも大きくなります。

脳動脈瘤コイル塞栓術

脳動脈瘤コイル塞栓術とはいわゆるカテーテル治療のことで、足の付け根から動脈瘤内に細いカテーテルを挿入し、コイルとよばれる金属を動脈瘤内に充填して破れないようにする治療です。患者さんの状況によっては局所麻酔でも治療が可能で、頭を開ける必要がない為に負担が少なく、最近ではこちらの治療法が増えつつあります。しかし、治療後の再発の問題や、治療中の動脈瘤の破裂時の対応がやや困難であるといった欠点もあります。

内頸動脈狭窄症

多くの脳梗塞の予防は高血圧、高脂血症、糖尿病といった生活習慣病の治療が中心になります。その中で、首にある血管(内頸動脈)が細くなっている場合(狭窄症)には外科的な治療で予防が可能になります。一定以上細くなっている場合(症候性80%、無症候性50%)には内頸動脈内膜剥離術、内頸動脈ステント留置術などの外科的治療をお勧めしています。

内頸動脈内膜剥離術 (carotid endarterectomy ; CEA)

内頸動脈内膜剥離術 (carotid endarterectomy ; CEA) は、全身麻酔をかけた状態で首の皮膚を切開し、内頸動脈を露出させ、血管を開いて狭窄の原因となっている肥厚した内膜を切除する手術です。以前より行われている手術で確立された手技になりますが、細くなっている場所や全身の状態などで、手術が行えない、もしくは難しくなることがあります。

内頸動脈ステント留置術 (carotid artery stenting ; CAS)

内頸動脈ステント留置術 (carotid artery stenting ; CAS)とは、コイル塞栓術と同じくカテーテルでの治療になります。足の付け根からカテーテルを挿入し、細くなった血管の近くまで進めます。ここからさらに細いワイヤーを細くなった血管に通し、風船で膨らませて血管を広げます。広げた部分にはステントと呼ばれる金属の筒を置いて、十分に広がるようにします。一般的に局所麻酔で行われ、手術時間も短くて済みます。しかし、カテーテルの挿入が難しい場合や、血栓予防の薬が使用できない場合などにはこの方法が行えないこともあります。