転移性脳腫瘍

脳転移は、化学療法への効果が低下する治療経過後半に認められることが多く、がん患者さんの10人に1人が脳転移を患っていると言われます。2005~2008の脳腫瘍全国集計調査報告では転移性脳腫瘍の原発巣は多いものから肺癌46.1%、乳癌14.5%、大腸癌6.0%、腎癌4.2%、原発不明癌3.6%となっています。がんの種類ごとに化学療法や分子標的薬などの開発状況や有効性が異なり、一言で「脳転移」といっても非常に多様性に富んだ疾患です。以前は、「脳転移には薬剤は効かない」と一様に考えられていましたが、全身の薬物療法に反応するがんも一部にはわかってきています。患者さんの全身の状態と、原発巣を踏まえたがんの性質、そして脳転移のサイズ・数などを踏まえ、手術や放射線治療といった「局所療法」や、薬物による「全身療法」を選択することが重要です。大阪国際がんセンター脳神経外科では、原発巣の主科および放射線治療医と連携し、最適な脳転移治療選択を心がけています。

転移性脳腫瘍の手術治療

3cm以上の病変で、患者さんの全身状態が良好である場合には手術による腫瘍摘出の適応となります。大阪国際がんセンター脳神経外科では、転移性脳腫瘍の腫瘍摘出術に術中ナビゲーションシステムを使用し、確実な病変の摘出を行っております。

転移性脳腫瘍に対する定位放射線治療

3cm以下の病変で、病変数が少ない患者さんでは、定位放射線治療の適応となります。ガンマナイフなどと同様、病変に対して集中的に放射線が照射される、ピンポイント照射の一種です。ガンマナイフと同等の治療効果を達成でき、分割照射を行うことで、遅発性の放射線壊死などの副作用を減らすことができます。また、ガンマナイフで行われる金属フレームによる頭部固定が不要であり、患者さんへの負担が少ない治療法です。

転移性脳腫瘍の全脳放射線治療

脳転移巣が多数の場合には、脳全体に放射線照射を行うこともあります。既に見つかっている脳転移の治療だけでなく、画像で描出されていない微小な脳転移巣を制御することも期待できます。

各種臨床試験

大阪国際がんセンター脳外科では、JCOGの「転移性脳腫瘍に対する、腫瘍摘出術+全脳照射と腫瘍摘出術+Salvage Radiation Therapy とのランダム化比較試験」登録施設として臨床研究に参加しております。症例登録は終了し、現在患者様がたの追跡調査中です。お問い合わせは以下までお願い申し上げます。

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