良性脳腫瘍

原発性良性脳腫瘍は原発性脳腫瘍の約60%を占め、髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫がもっとも頻度の高い疾患です。いずれもWHO(世界保健機構)の悪性度分類でgrade Iとされ、適切な治療により良好な治療経過が見込まれる腫瘍になります。しかしながら、腫瘍が発生する部位や良性腫瘍と考えられながら一部に悪性の性質を兼ね備える場合もあり、高度に専門的な知識と治療技術が必要になります。以下に、代表的な原発性良性脳腫瘍である髄膜腫、下垂体腺腫についての概略を説明するとともに、成人病センター脳神経外科で行っている治療について説明します。

髄膜腫

全原発性脳腫瘍の30%を占める良性脳腫瘍です。脳を覆う硬膜、くも膜から発生し脳実質から発生する神経膠腫(グリオーマ)と対照的です。一般には緩徐な腫瘍増大を認めWHO grade Iとされますが、一部にgrade II, IIIと考えられる悪性のものもあります。治療としては手術による摘出術が基本になりますが、再発例や全摘出が難しい例では定位放射線治療やIMRTが行われます。

近年MRIやCT検査が簡便になり、脳ドックなどで無症状の髄膜腫がしばしば発見されます。治療法は手術が基本になりますので、無症状の髄膜腫に対する治療方針の策定には慎重を期すべきと考えられています。成人病センター脳神経外科では、無症状の髄膜腫に対しては、腫瘍増大速度を計測し、手術適応を慎重に選択し、各患者さんにとって最適な治療方針を決定しています。

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髄膜腫の一部には頭蓋底と呼ばれる頭蓋骨の底面に腫瘍が発生することがあります。成人病センター脳神経外科では、耳鼻咽喉科と共同で手術を行い、頭蓋底の再建術を併用するなど、積極的な頭蓋底手術手技を取り入れております。

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下垂体腺腫

下垂体腺腫は、脳下垂体に発生する良性脳腫瘍です。下垂体は様々なホルモンを産生する臓器であり、体内のステロイドホルモン、尿量、甲状腺機能、性腺機能、成長ホルモンなどを調整しています。下垂体腺腫にはホルモンを産生する「機能性腺腫」、とホルモンは産生せず腫瘍により周辺の神経組織を圧迫する「非機能性腺腫」があります。治療には一部の機能性下垂体腺腫に有効である「薬物療法」と根治的治療効果が期待できる「手術治療」があります。

手術治療<内視鏡併用経鼻的経蝶形骨洞腺腫摘出術>

成人病センター脳神経外科で採用している手術法で、下垂体腫瘍の現在の標準的な手術術式です。鼻腔より内視鏡を使いながらトルコ鞍という下垂体が格納されている頭蓋底部へと到達し、腫瘍を摘出する術式です。腫瘍摘出の際には内視鏡と手術用顕微鏡を併用します。腫瘍が大型の場合には、上口唇下(上顎)から侵入することもあります。

薬物療法

成プロラクチン産生下垂体腺腫に対して「ブロモクリプチン」や「カベルゴリン」と言った内服薬が有効です。また、先端巨大症に対しては「オクトレオチド」などの注射薬が有効ですが、根治は難しく、手術治療に対する補助療法という側面が強い治療法になります。